アタッシェ ド プレスのふたり。
ベテラン、新人が明かす仕事のエッセンス

「レボリューションPR」は、日本モードから海外ベーシックまで幅広く取り扱うアタッシェ ド プレス(以下、プレス)。ファッション業界に関わるスタイリストやエディターなら知らぬ者がいないオフィスだ。今回登場するのは同オフィスに所属する、業界で20年来活躍するベテランの田中 望さん(写真右)と、今年新卒で入社した舘野藍花さん(写真左)のふたり。
東京でファッションショーを開催したヨシオクボのバックステージを仕切った彼らのドキュメンタリーをレポート。さらに記事後半では、Q&A形式でふたりに聞いた目からウロコのプレス仕事の話もたっぷりと。プレスを目指す人は読まないとソンする必見コンテンツ!
東京シーンを盛り上げるヨシオクボ

レボリューションPRが長く関わるモードブランド、ヨシオクボ。 「楽天ファッション・ウィーク」(※パリやミラノと同様の東京のファッション・ウィーク。楽天がスポンサーなためこの名称)のなかでもダイナミックなカッコよさでトップを走る存在だ。観に来る観客も一流バイヤーから著名ジャーナリストらがずらり。
近年はプロのショー演出家に任せず自分たちで組み立てる異例の体制でコレクションを発表。デザイナーの久保嘉男さんの世界観をダイレクトにステージで表現している。レボリューションPRはその挑戦を裏からしっかりとサポート。
田中さんがリーダーとなり、信頼する他オフィスのプレスチームの手助けも借りて成功させた2026年9月の舞台裏を覗いてみよう。

写真中央が、リハーサルをチェックする久保嘉男さん。

田中さんもデザイナーの近くに立ち、いつでも話を聞ける体制で見守る。

リハーサル中にも、久保さんと田中さんが確認事項を相談。

他社のプレスたちもショーの成功させるため大集結。今回は学生ヘルパーに頼らず、プロのチームのみでサポートした。

真剣に働く舞台裏でも笑顔はこぼれる。信頼し合い気心が知れるスタッフ同士ならではのひとコマ。

新しいシーンを創造する次世代プレス集団たち。「レボリューションPR」「エンケル/スタジオファブワーク」「103 TOKYO」。自らシーンを切り開く独立体制が、大手プレス会社に所属しない彼らの強みだ。クリエイティブを愛するファッション関係者に深く信頼されている。
写真:前列左より、野崎花好(エンケル/スタジオファブワーク)、尾花未来 (103 TOKYO)、和田かおり、舘野藍花(2名ともにレボリューションPR)。後列左より、西澤祐哉、水澗 航(2名ともにエンケル/スタジオファブワーク)。

学生時代にショーをよく手伝っていた舘野さん。プロとしてはこのショーが初参加。

場を和ませる元気印の野崎さんはエンケル/スタジオファブワークの所属。文化学園大学出身で、文化服装学院生と同じ新宿の敷地に通っていた。

ひとり黙々と招待客リストを再確認していたのが、「TEN10」所属の宮崎理久さん。彼も今回のショープレスの一員。文化服装学院Ⅱ部服装科の卒業生だ。ここにも“文化つながり”が。

発表する服を着たモデルたちがリハーサル。緊張したショー本番とは異なる、素のモデルたちの体温を感じられるのはバックステージにいる者の特権。

右端がレボリューションPRを立ち上げた創設者&代表の和田さん。温和な人柄で人望が厚い。

左がエンケル/スタジオファブワークの創設者&代表の水澗さん。ダブレット、シュタイン、ヨークを「ファッション プライズ オブ トウキョウ」を受賞するほどのブランドに高めた実力者。

久保さんと談笑するのは、サルバム、アンリアレイジなどのクリエイティブなブランドを支える尾花さん。プレス会社から独立してフリーランスになり「103 TOKYO」を設立。

SNS発信する材料集めもプレスの重要な仕事のひとつ。

立て看板の配置にも田中さんはこだわりを見せる。ゲストの入場を邪魔しないように、きちんと役割を果たせるように整えていく。本番直前でも会場設営からゲストの案内に至るまで、ショーを成功させるあらゆる要素に気を配る。

ショー開始30分前に会場入りがスタート。田中さんも入口に立った。笑顔で知り合いの来場者の名前を呼び、来てもらった感謝の言葉を述べつつ中に誘導していく。来場者も温かな気持ちになりつつ席につく。田中さんの心遣いがブランドの印象を高めるのに大きく貢献している。

2027-28年秋冬コレクションがいよいよはじまった。ノマド(遊牧民)なテントを中央に据え、明るい照明のなか足早にモデルたちが歩き回る。

スピーディに進み大成功に終わったフィナーレ。

最後にデザイナー久保さんが登場。

暗転するとUV照明で仕掛けが出現。久保さんの顔にも蛍光塗料が!自らハンディUVライトで照らすのもジョーク好きなデザイナーらしい演出。
華やかなショーがここでフィナーレ。ショー企画、招待客選び、招待状のメール送付など打ち合わせを重ね実行してきた地道な作業が実を結んだ瞬間だ。終わってからの会場内でも、帰る客へのお礼の挨拶、会場に残る人々のアテンド、ジャーナリストへのデザイナー取材への誘い、後片付けと、プレスがやることはまだ山積み。
「未経験者でも問題なし」
「知らない雑誌が多すぎて!」
ふたりが語ったプレス仕事のリアルな本音
田中さんはファッション分野のプレスオフィスが日本に少なかった時代から、手探りで経験を積んできた叩き上げ。一方で舘野さんはワークフロウが整った現代に、新卒でレボリューションPRに入社して1年目の新人。立場が違いつつも熱い想いで共通する彼らが、仕事への問いに答えてくれたQ&A。

Q. 即戦力を求める少人数制のプレス会社はあまり新卒を採らないようです。レボリューションPRが舘野さんを採用したのはなぜですか?
田中「20代後半の経験者を含め何人も面接したなかで、いちばんガッツがありそうと考えたからです。しゃべっていてそう感じました。プレゼンの資料をちゃんと作れていたこともよかった。彼女の若さが会社に新しい発想力をもたらす期待がありました。プレスは服を借りに来るスタイリストさんやエディターさんとコミュニケートする能力も欠かせません。舘野はそれをちゃんとやれそうにも思えたのです」
即戦力でないことは不安でなかったですか?
田中「僕自身が若い頃に、人に薦められ何も知らない状態でプレス仕事に就きましたから。他社はどう考えるかわかりませんが、僕や代表の和田は経験をあまり重視していません。伸びしろがあるかのほうが大切です」
Q. 舘野さんはどのような経緯でこの仕事に就きましたか?
舘野「文化でファッション流通科に入学し、2年次にファッションプロモーションコースを選んだのは、『服を作るより伝えることのほうが向いていそう』と感じていたからです。ショーが好きで、学校に案内が来るファッション・ウィークの手伝い募集には全部申し込んでました」
田中「ショーの現場体験があったから、面接のとき僕らと共通言語で話せたのかも。まったくの未経験者ではなかったから」
舘野「ファッション業界への人材紹介の会社を通じて、レボリューションPRが募集していることを知りました。『新卒でもOKな会社があるよ』と教えていただいて」
田中「ちょうどスタッフがひとり辞めた時期でした。人が必要になり、知り合いが勤めている人材紹介会社に、『誰かいい人いたら教えて』と伝えていました。タイミングもよかったんですね。常時募集しているのではありませんから」
Q. 田中さんに伺います。ずばり、ファッションのプレスとはどんな役割の職業なのでしょうか?
田中「ブランドの価値や記憶を蓄積させる仕事でしょうか。あと、翻訳することですね。ブランドの思想や世界観をいろんな人に向けて翻訳して発信すること」

服だけではイメージしにくいブランドの全体像を明確にするのがプレスの仕事ということですね。誰にでもわかりやすく伝えられたら、ブランドを好きになる人が増えていきますし。
田中「そうですね。ショーをやるのもその活動のひとつ。もちろん新作発表としてのビジネスの意図もありますが」
Q. 舘野さんに伺います。日々の業務ではショールームで服を貸し出すことが多いでしょうが、たいへんさを感じるのはどの点ですか?
舘野「仕事をはじめた当初に困ったのは、雑誌名、メディア名を知らなかったこと。正直なところ学生時代の情報集めはネットが中心で、ファッション誌をあまり見ていませんでした。スタイリストさんのリース(貸し出し)はまず電話かメールをいただくことが多いのですが、そこで聞いたメディア名がわからないと手がかりが掴めません」
確かにスタイリストは「どこどこ(雑誌名)のなになに(特集名)の掲載なんですけど、こんな素材のこんなアイテムありますか?」などと問い合わせしますよね。それに対応するには固有名詞や専門用語を理解する必要がありそうです。
舘野「そうなんです。世の中にどんな雑誌があるか毎日調べ続けてます。本屋さんや文化の図書館に行く機会が増えました。知らなかった世界でとても楽しいですがたいへんです」
田中「僕が若かった頃は紙の雑誌しかなかったけど、いまはインスタ発信のインフルエンサーやYouTube動画もメディアと呼ばれる時代。僕でも全部は把握し切れませんよ」
舘野「あと自分に足りないと痛感するのが素材の知識。例えば『夏の特集号でシアー素材の服を探してる』とリクエストされたとき、頭のなかでパッとイメージできないんですよ。シアーというものは知っていても、コットンなのかリネンなのか素材の特性までは思い描けません。とくに電話のとき言葉でアイテムを説明できないのがもどかしくて。これは勉強しないと本当にまずいと感じています」
田中「問い合わせメールが来たら、『この人は本当はなにを探しているのだろう?』と文章の裏側を読み取る力も大切です。例えば『ワークウェア特集に載せるコーデュロイのパンツ』と言われたら、『コーデュロイはありませんが、モールスキンならありますよ』と提案を返す。素材の知識があればそういうことができるんですよ。その人がコーデュロイだけ求めているのか、ほかのワークウェアでもOKなのかを探る。提案が採用されアイテムが掲載されれば、それが我々の実績になります」
相手の言葉の“行間を読む力”は、多数の仕事相手との対話を繰り返すうちに身につくスキルなのかもしれませんね。

Q. 仕事で身につけておくべきスキルや知識はほかにありますか?
田中「ファッション全般の知識は多少あるほうがいいのは確かでしょう。世界中で発表されたコレクション情報は常にチェックしておくとか。ただその人が、ほかになにかしら持っていれば大丈夫な気もします。単に平均的で優秀な人より、ひとつ突き抜けている人のほうが好まれるときもあるのです。キャラが立っていることで活躍しているプレスもいますから」
田中「もうひとつ、文化の学生さんに伝えたいことがあります。それは卒業しても『新・実用服飾用語辞典』『ファッション辞典』などの購入した辞典を絶対に捨てるな!ということ」
舘野「はい!ホントにそうです!(笑)。わたしもよく見返してます」
田中「プレスの仕事をする上で本当に役立ちます。いまは1970年代以降から現在までのモードの流れを体系化して紹介するメディアがすっかりなくなってしまいました。単発でクリエイティブ・ディレクターやブランドの歴史を掲載する記事はあっても、モード全体の歴史が見えてきません。昔はファッション誌が当たり前にやっていた企画で、僕も勉強させてもらってました。いまは辞典がその代わりを担っています。文化には過去の膨大な雑誌がストックされた素晴らしい図書館があります。文化生なら興味があれば幾らでも調べられます。好きなデザイナーやジャンルを追うだけでも構いません。ファッションのプレスとして知っておくべき知識を養えますよ」
プロの現場からのふたりの提言はいかがだっただろうか。プレスを目指す人は大いに参考になったはず。
ただ一方で、プレスにも様々なタイプの人がいるのも事実。ファッションに関心が低い人もプレス業界にはたくさんいるのだ。そんな人は芸能事務所とのやり取りが上手だったり、インフルエンサーと仲が良かったり、それぞれ得意技がある。
田中さんと舘野さんの目線は、ブランド側と一緒にシーンを作り上げるクリエイティブ発想。デザイナーの想いに共感して共に活動したい人は、彼らの生き方をひとつの手本にしよう。
※2026年9月取材
LINKする卒業生 ・染谷由希子 Sinzone ディレクター兼デザイナー 服飾専門課程 服飾専攻科 デザイン専攻卒業 https://www.instagram.com/yukiko_someya_/ https://www.instagram.com/shinzone_official/ 「入学式で隣だった同級生です。なんだかんだで20年以上付き合いがある友人です」(田中) ・Jonathan Lee The Molecule代表/ファッションブランドコンサルタント 服飾専門課程 服飾専攻科 デザイン専攻卒業 https://www.instagram.com/_jona_jona/ 「香港出身の同級生です。今はアジアを中心に飛び回っています。たまに会える友人です」(田中) ・石井 麗 フリーランス動画クリエイター ファッション流通専門課程 ファッション流通科 ファッションプロモーションコース卒業 https://www.instagram.com/urara_is_/?hl=ja ・喜井景菜 PA Communication勤務 PRスタッフ ファッション流通専門課程 ファッション流通科 ファッションプロモーションコース卒業 https://www.instagram.com/_.anorih/ 「ふたりとも2年次のファッションプロモーションコースで出会った大切な友達です。定期的に集まっては頑張る姿からたくさんのパワーをもらっています。同じスタートラインを知っているからこそ、高め合える大切な存在です」(舘野) |
記事制作・撮影
一史 フォトグラファー/編集ライター
明治大学&文化服装学院(旧ファッション情報科)卒業。編集者がスタイリングも手がける文化出版局に入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。撮影・文章書き・ファッション周辺レポート・編集などを行う。
Instagram:kazushikazu
関連サイト
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レボリューションPRの公式インスタグラム。所属スタッフの個人インスタグラムのアドレスも掲載。https://www.instagram.com/revolution_pr_/
INTERVIEW
Revolution PR
田中 望(たなか・のぞむ)
服飾専門課程 服飾専攻科 デザイン専攻 2006年卒業
東京出身。文化服装学院を卒業後にファッションブランドのアトリエに勤務。展示会に立ち来場者へプレゼンするようになる。プレス仕事の素質を見出され、人の紹介で立ち上げ初期のレボリューションPRに参加。代表の和田かおりさんと共に独自のPR体制を整えて現在に至る。
舘野藍花(たての・あいか)
ファッション流通科 ファッションプロモーションコース/ファッション流通専攻科 2026年卒業
栃木出身。幼少の頃からファッションが好きで、“伝える”仕事を目指して高校卒業後に文化服装学院に入学。2年次の選択コースは近年に新設されたファッションプロモーションコース。ファッション業界への人材紹介会社に登録し、26年に新卒でレボリューションPRに入社。
NEXT
次回のVol.56は、双子で刺繍ユニットとして活躍するKENDAI(西 大地さん/建太さん)が登場!「刺繍は布の入れ墨」と考える彼らが刺繍を仕事にしたユニークな経歴に迫る。
INTERVIEW
Revolution PR
田中 望(たなか・のぞむ)
服飾専門課程 服飾専攻科 デザイン専攻 2006年卒業
東京出身。文化服装学院を卒業後にファッションブランドのアトリエに勤務。展示会に立ち来場者へプレゼンするようになる。プレス仕事の素質を見出され、人の紹介で立ち上げ初期のレボリューションPRに参加。代表の和田かおりさんと共に独自のPR体制を整えて現在に至る。
舘野藍花(たての・あいか)
ファッション流通科 ファッションプロモーションコース/ファッション流通専攻科 2026年卒業
栃木出身。幼少の頃からファッションが好きで、“伝える”仕事を目指して高校卒業後に文化服装学院に入学。2年次の選択コースは近年に新設されたファッションプロモーションコース。ファッション業界への人材紹介会社に登録し、26年に新卒でレボリューションPRに入社。


