NATSUKO OKITA

アタッシェドプレス
沖田夏子

インターンで信頼を掴んだ
新人PRスタッフ

PRコミュニケーション&マーケティングの会社「M(エム)」に新卒入社して1年が過ぎた沖田夏子さん。文化服装学院の卒業生たちの現在を追う、“文化つながり”のインタビュー集「LINKS(リンクス)」にさっそく登場。高校時代からの憧れに歩みを進めた沖田さんの、夢を掴むヒントを大公開!

「M」の日常

Mは多くのブランドと提携をしているが、併設しているショールームにはブランドごとにわけて展示もされている。

モード関係者なら誰もが知る有力なアタッシェドプレスのM。東京・原宿のモダンな一軒家をショールーム兼オフィスにしている。沖田さんが毎日通うのがこの家だ。若手がまず任される仕事は、スタイリストや雑誌エディターらに貸し出すサンプル服の管理。リース(貸し出し)依頼を受けて現場で接客するのも主な業務である。
「日々の業務はサンプルの管理をしつつラックに整えたり、追加サンプルを取り寄せたりすることから始まります。掲載された誌面をスクラップして結果と共にブランドへご報告するのも役割です。華やかな日常をイメージする人もいるかもしれませんが、実際にはひとつひとつが地道な活動だと思います」
沖田さんが基本的な仕事をこのように話す。経験を積むことで外部とのネットワークを広げ、ブランドともより密に関われるようになっていく。春夏と秋冬の年2回あるシーズン立ち上げのときは、
「どのようにプレスルームにレイアウトするか社内でも相談して決めていきます。スタイリストさんやメディアの人たちを招く内覧会の日までにプランをたてています」
スケジュール管理も重要な仕事のひとつだ。

ゴールドウインのアクティブウエアブランドのダンスキンと、ウジョーがコラボしたウジョー ダンスキン。

先輩をサポートすることから

Mはさまざまなブランドと契約してPR業務を行っている。マーク ジェイコブス、フェンディ、ケンゾー、アン ドゥムルメステールらの欧米勢から、ウジョー、トモ コイズミらの日本勢までエッジーなモード系が主なクライアントだ。
「取り扱いブランドの単独展示会やイベントも多く、そういった特別な機会をわたしたちが対応していきます。イベントに招くセレブのブッキングを行うことも。先輩スタッフをサポートするのが新人の役目なのですが、SNS上でどんな人が注目されているかを情報提供します。インスタグラムでリサーチ専用のアカウントをつくり、影響力のある人たちをフォロー。ファッションメディアをライン登録して情報を得ることも欠かせません」
イメージアップしたい、売上を伸ばしたいなどクライアントが求める要望はさまざま。スタッフはそのリクエストを汲み取り、日々模索しながら有効な手段を探っている。

手に持つパソコンでサンプルのストックを表示させつつ、ショールームにある在庫を管理。
サンプルにつけられた品番は管理に欠かせない大切なデータ。
サンプルのリース連絡は、すぐに結果がわかる電話連絡が主流。相手のリクエストを正しく把握することが大切。

 

リース対応のとき沖田さんがより頑張ろうと発奮するときがある。それはスタイリストから「急に服が必要になった」などの相談を受けたとき。
「人が困っているとき真摯に対応しようと考えます。丁寧に向き合えば結果的にブランドの印象もよくなると考えています。なによりも人に寄り添うのが好きなのだと思います」
ブランドに寄り添い、メディアにも寄り添うPRスタッフ。ときに両者の板挟みになることもありそうだ。そんなとき軽やかに乗り切れる人が、誰からも信頼されるスタッフなのかもしれない。

日常の仕事道具は電話とパソコン。学生生活はスマホで間に合っても社会の場は別だ。

リースや取材の電話をしながら必要項目をメモ。雑誌のときは掲載号、発売日、テーマ、掲載の見え方などを細かく相手に尋ねていく。

担当ブランドの存在

沖田さんが直接担当するブランドのひとつにウジョーがある。パリの公式スケジュールでコレクション発表し、さらなる活躍が期待される注目ブランドだ。
「文化服装学院時代にウジョーを知り『カッコいい』と思ってました。まさか自分が担当できるなんて。デザイナーの西崎暢さんはわたしが好きなワイズを手掛けるヨウジヤマモト社でパタンナーをなさっていました。そんなことにも深いつながりを感じます」
同ブランドに惹かれる沖田さんの気持ちをMの上司が感じて担当にしたのだろう。ただしPRはブランドの意向と異なるやり方で成功に導くケースもある難しい舵取り。客観的な対応とバランスを取るのはベテランでもたいへんそうだ。

ウジョー 2023-24年秋冬パリコレクションのルック。©UJOH
23年3月に東京・表参道ヒルズで展示されたトモコイズミの凱旋イベント風景。沖田さんがMではじめてメインで担当したイベントだ。©TOMO KOIZUMI

マーク ジェイコブス×文化服装学院の架け橋を

23年4月14日(金)から20日(木)まで、東京・表参道「ブックマーク」で入賞作品が展示された。

家、ライダーズ、刺繍ニットの3体が入賞作品。ほか3体は通常商品の「THE TOTE BAG」。店に次々に入ってくる海外観光客にも大人気の展示イベントになった。

 

マーク ジェイコブスが文化服装学院とパートナーシップを組みコンペティションを開催。アイコンバッグ「THE TOTE BAG」を新しくする試みで、23年4月に上位入賞者が発表された。学校との仲介役を担ったのが沖田さんである。
「Mのクライアントであるマーク ジェイコブスジャパンから、PR企画の相談がありました。その進行のなかで文化服装学院とのコラボが実現したんです。卒業生であるわたしが学校に直接連絡したりタイムスケジュール調整なども担当しました。バッグ作品は原宿にあるマーク ジェイコブスの書店『ブックマーク』で展示されました。実は当初はSNSだけで紹介する予定だったんです。でも作品のクオリティの高さを知った本国アートディレクターが展示を決定。ぎりぎりのスケジュールで進行しました。Mが提案したこの企画はSNSでも『いいね』を多くいただき、とても嬉しく思っています」
ファッション界はつねに新しいアイディアを求めている。服づくりと同様に宣伝もまたクリエイティブな活動だ。

1位に輝いた雛森優民さん(当時アパレルデザイン科3年)のバッグ。
バッグをボアで覆い毛糸を編み込んだ山岡寛泳さん(Ⅱ部服装科3年)の作品。ライダーズモチーフの作品はセティアワン ヴィキ ロベリさん(当時服飾専門科)のもの。

 

学生のときから積極的に

流通専攻科卒業制作ファッションショー「CANVAS」のフライヤー。

文化服装学院の卒業を迎えて、沖田さんが通った流通専攻科が卒業ショーを開催。ほかの5名とともに中心的な企画チームの一員になった。沖田さんの学生生活のハイライトだ。
「渋谷『MIYASHITA PARK』で開催した思い出深いイベントです。在校生の作品に加え、卒業生のブランドにも参加していただきました。WWDJAPANや繊研新聞の記事にもなったんです。ブランドもモデル探しも自分たちで行いました。企画メンバーのなかにはファッションイベント運営会社に就職した人もいます。いま仕事の現場で顔を合わせることもあるんですよ」
“文化つながり”の仲間はこれからも支え合っていくに違いない。

【ファッション流通専攻科卒業ファッションショー『CANVAS』in MIYASHITA culture PARK(2021年度 )】

【MIYASHITA PARKで在学生ブランドのファッションショーを企画・演出した学生5名に密着!】

 

Mは社員数が限られる少数先鋭で、スタッフの多くは中途採用や経験者。新卒の沖田さんは、学生時代から長くインターンしたことではじめての扉を開いた。
「流通専攻科に進んだ3年生のとき、午前中で授業が終わる水曜日の午後だけ週イチで通わせていただきました。夏休み期間は週2〜3の終日で。クラス担任に日頃から『PRを仕事にしたい』と伝えていたから叶ったことです。アルバイトと違うインターンですから、お給料が出ない無償でのトレーニング。学生のうちから社会経験ができる貴重な機会と考えて、卒業までの1年間続けさせていただきました」
Mで最初に教えられたのは電話の応対の仕方。服のリースを依頼するスタイリストは主に電話で内容を伝えてくる。さらに社員になり毎日働きはじめてからクリアになったこともある。
「週イチ午後だけですと、作業を点と点でしか理解していませんでした。毎日関わりようやく線でつながってきました。やったことの結果も見えてきたのが嬉しいですね」
なにをしているかの気づきが、なにをやればいいかへのポジティブな発想へと結びついていく。

向上心がキャリアを生む

Mの一軒家オフィス1階にて。着ているシャツはウジョーのもの。シューズはMの取り扱いブランドであるビルケンシュトックの軽量サンダル。スタッフの皆が室内で愛用するユニフォーム的な存在。

 

学生のうちから仕事の現場に身を置いた現在23歳の沖田さん。スタート地点が同世代より早くても、まだまだ経験が浅いと考えている。
「イベントを自分でオーガナイズすることに苦手意識があるので克服したいです。関わる一人ひとりに必要なことを依頼するのがまだ上手にできません。さまざまな条件をクリアするスケジュール調整も難しいです。アクシデントが起きたとき、自力で解決できる判断能力も身につけたい。いまは答えを先輩に頼ってばかりですから」
プロフェッショナルな人たちと接する日々のなかで、至らなさを感じる点もあるのかもしれない。ただしこの向上心こそが彼女の強み。自身に課した課題をいつの間にかクリアしている日も遠い先ではなさそうだ。

※2023年4月取材


LINKする卒業生

・板橋一樹(ファッション流通専攻科卒業)
VISIONS AND PARADOX勤務
www.instagram.com/zuu___k

・高橋萌(ファッション流通専攻科卒業)
bon勤務
www.instagram.com/moemypage

「ふたりとも流通専攻科の卒業ショーでの企画チームのメンバー。ともにファッションイベントの運営やプロデュースを行う会社に勤め、仕事上でもつながりの深い仲間たちです」

記事制作・撮影
一史  フォトグラファー/編集ライター
明治大学&文化服装学院(旧ファッション情報科)卒業。編集者がスタイリングも手がける文化出版局に入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。撮影・文章書き・ファッション周辺レポート・編集などを行う。

Instagram:kazushikazu

関連サイト

INTERVIEW

アタッシェドプレス
M(エム)勤務
沖田夏子(おきた・なつこ)
ファッション流通科ショップスタイリストコース/ファッション流通専攻科 2022年卒業

2000年、東京出身。高校通学時からファッションの楽しさを人に伝えるPRの仕事を目指し文化服装学院に入学。東京・渋谷「MIYASHITA PARK」での卒業ショーを企画。PRコミュニケーション&マーケティング「M」でのインターンを経て同社に入社。最年少スタッフとして奮闘する日々。

NEXT

Vol.023

劇団四季 衣裳部チーフ 渡邉里花

ファッション高度専門士科卒業

INTERVIEW

アタッシェドプレス
M(エム)勤務
沖田夏子(おきた・なつこ)
ファッション流通科ショップスタイリストコース/ファッション流通専攻科 2022年卒業

2000年、東京出身。高校通学時からファッションの楽しさを人に伝えるPRの仕事を目指し文化服装学院に入学。東京・渋谷「MIYASHITA PARK」での卒業ショーを企画。PRコミュニケーション&マーケティング「M」でのインターンを経て同社に入社。最年少スタッフとして奮闘する日々。

NEXT

Vol.023

劇団四季 衣裳部チーフ 渡邉里花

ファッション高度専門士科卒業