NANAKA YOTSUYA

ユナイテッドアローズ
アティセッション ディレクター
四谷奈々可

25歳でディレクターに就任!
新ブランドを託されたセンス

2024年春夏からはじまったウィメンズブランド「アティセッション(ATTISESSION)」。ユナイテッドアローズが次世代の顧客を獲得する重要なプロジェクトだ。若手の四谷奈々可さんをディレクターに抜擢して新しい感性を打ち出している。ベテラン社員たちも認めた彼女のディレクションの力とは?

アティセッションの世界観

「好きな時代は1990年代。モデルのケイト・モスが活躍した頃です。それに気づいたのが文化服装学院

の学生のとき。ファッション雑誌がとにかく好きで、古い本や写真集を見るうちに自分に合うと感じました」
四谷さんが自身のベースになるスタイルをこのように語った。企画して立ち上げたアティセッションの世界観にも、90年代のニューヨークやヨーロッパのエッセンスが息づく。ミニマリズム、デニム、細身のシルエット、マスキュリン……。アティセッションのブランド名も、ケイト・モスが広告出演したカルバン・クラインの香水「オブセッション」を彷彿させる。そこに四谷さんならではの古着や女性的なニュアンスがミックスされ、スポーティでカッコいいアティセッションの女性像ができあがっている。

プレデビューとなる24年春夏のルックより。

デビューシーズンのイメージビジュアル。

「20代〜30代の若い女性をターゲットにしていますが、クオリティはユナイテッドアローズ品質です。社内のほかのレーベルとも差別化しつつ、上質さを大切にしています。着る人の目線でいうなら、アティセッションは気張らない服、機能性のある服です」
四谷さんは自身への期待を胸に、しっかりとブランドの在り方を見据えている。

本格デビューとなる24-25年秋冬

この秋冬に発売されるスタイリッシュなジャケットとショートパンツのセットアップ。
トレンドの短丈ブルゾンも、ロングコートもあるトータルワードローブ。インナーに優しさやフェミニンさを加えるスタリングも四谷さんらしいセンス。

24年春夏は20型で、24-25年秋冬では約80型に広がった。オリジナルだけでなく買付けアイテムも加えて、スタイリング提案を強化し単独店舗のオープンに備えている。
「買付けも、わたしともうひとりのバイヤーと二人でやっています」
四谷さんはディレクターでありバイヤーでもあり、日々やることは山積みだ。

男性が好みそうなアメカジのキャップと、色を揃えたネイビーニットのコーデ。インナーをレースにしてフェミニンさをプラス。
アティセッションのキーアイテムのひとつがデニム。オーセンティックを現代的にアレンジ。

MZ世代のトレンドも例えば、バレンシアガ的ビッグシルエット、韓国ガールズグループ風など多種多様だ。90年代からY2K(2000年代)にかけての時代も人気が続く。さらに最近は近未来的メタリックのY3K(3000年代)までトレンドワードになってきた。こうしたなかでアティセッションに漂う個性のひとつがメンズウェアの要素。このルーツも文化服装学院時代にあるようだ。
「通ったファッション流通科は、服づくりを専門に学ぶ科ではありませんでした。いま商品企画するときに、この科で得た感覚が活かされているようです。服づくりの科だと自身のクリエーションを追求する活動が主なのに対して、流通科はファッション全体を自然にインプットできる強みがあります。わたしはフラットな目線で周りの男性たちの服装もよく見てきました。その魅力をアティセッションに取り入れています」

社内パタンナーが活躍する服づくり

ブランドに関わるスタッフたちが集まって立ち会った、新製品の服づくりの様子。
四谷さんがフィッティングモデルになりパタンナーがシルエットを細かく調整していく。

社内のパタンナー、企画デザイナー、営業スタッフなどと一緒に新製品をつくる制作過程では、四谷さん自身がフィッティングモデルを務めることも。仮縫い用のシーチング布で仕立てた服を着て、皆の意見を聞きながら細部を詰めていく。
「ブランドのスタート時と体制が大きく変わったのは、関わる人が増えてきたこと。ひとりで迷っていたことを誰かの意見を聞いて解決でき、気持ちも軽くなるので助かります」
アティセッションはMD(マーチャンダイザー)も彼女と同世代。ビジュアル制作を依頼している外部のフォトグラファーやスタイリストも同世代だ。
「外部の彼らは文化服装学院の同級生なんです。好きなものをお互いに知って感覚を共有しやすく、仕事面でとても役に立っています」
若い“文化つながり”がこのような場で活きてくる。

ショップスタッフからディレクターに

ファッションが好きになったルーツは、ヴィヴィアン・ウエストウッドとヨーロッパ古着。文化に通って趣味の幅が広がった。「ユナイテッドアローズに入社したのは、好きなインポートものが多かったから。エイチ ビューティー&ユースや6(ROKU)などの弊社の店によく行ってました」

四谷さんはショップ勤めしながら、ダブルジョブで「ビューティー&ユース」のEC向け商品の企画も行ってきた。会社から提案されたその仕事に挑んだことが、いまのディレクターの立場へとつながった。
「文化服装学院卒業後に入社して勤めた店が、ビューティー&ユース渋谷公園通り店(現在は閉店)でした。社内の商品部の人がよく来る店だったのです。バイヤーになりたいことや商品企画のことなどを話す機会もありました。そのうちに声が掛かり週イチでオフィスに通い商品企画にも携わるようになりました。しだいに週2〜3日とオフィス勤務が増えていき、丸2年近く経ちました。その時期にユナイテッドアローズの中長期計画の一環として、若い世代向けレーベルを立ち上げることになりディレクターに就任しました」
彼女の起用は、企画力の実績、売上の実績、コミュニケーションの能力、将来の可能性などが買われた結果なのだろう。これからファッションの仕事を目指す人たちも、毎日をしっかり積み重ね、自己アピールのプレゼン能力も意識することが社会に出て役立つかもしれない。将来にサポートしてくれる人が現れ、思いがけず新しい道が開けることもある。ファッションを仕事にすることは、変化していく刺激的な未来を楽しむことでもある。

※2024年7月取材


LINKする卒業生

・石井涼太(ファッション流通科リテールプランニングコース卒業)
ビジュアルディレクター

「個人でやっているブランドデザイナーであり、カメラマン、DJなど、一つの肩書ではなくクリエイターとして一緒にいて刺激をもらえる人です。アティセッションのルック撮影をお願いしている、ブランドに欠かせないヴィジュアルディレクターです」

・成岡愛純(ファッション流通専攻科ファッションディレクター専攻卒業*現ファッション流通専攻科)
スタイリスト

「プライベートで仲がよく、アティセッションのビジュアル撮影も手伝ってもらっている仕事仲間でもあります。今後は彼にルックのスタイリングをお願いしたいですね」

記事制作・撮影(ポートレート・取材)
一史  フォトグラファー/編集ライター
明治大学&文化服装学院(旧ファッション情報科)卒業。編集者がスタイリングも手がける文化出版局に入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。撮影・文章書き・ファッション周辺レポート・編集などを行う。

Instagram:kazushikazu


●関連情報
四谷さん メディア掲載情報
WWD JAPAN YouTubeチャンネル
【密着】ユナイテッドアローズ26歳の新人ディレクターはどんな人?販売員から抜てきされた四谷奈々可


関連サイト

INTERVIEW

ユナイテッドアローズ
アティセッション ディレクター
四谷奈々可(よつや・ななか)
ファッション流通科 モデルコース/ファッション流通専攻科2020年卒業。

1998年生まれ。石川出身。高校卒業後に文化服装学院に進学。卒業年にバイヤーへの憧れを抱きつつユナイテッドアローズのショップスタッフに。2022年に店舗勤務と兼務でオリジナル企画も行うようになり、新ブランド、アティセッションの立ち上げディレクターに就任。現在単独店舗をオープンさせる企画も進行中。

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WEGO EC撮影スタッフ 玉置真奈

ファッション流通科 ショップスタイリストコース卒業

INTERVIEW

ユナイテッドアローズ
アティセッション ディレクター
四谷奈々可(よつや・ななか)
ファッション流通科 モデルコース/ファッション流通専攻科2020年卒業。

1998年生まれ。石川出身。高校卒業後に文化服装学院に進学。卒業年にバイヤーへの憧れを抱きつつユナイテッドアローズのショップスタッフに。2022年に店舗勤務と兼務でオリジナル企画も行うようになり、新ブランド、アティセッションの立ち上げディレクターに就任。現在単独店舗をオープンさせる企画も進行中。

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WEGO EC撮影スタッフ 玉置真奈

ファッション流通科 ショップスタイリストコース卒業