デザインも制作もひとりで担う
ハンドメイドジュエリー

その名はcomado(=小窓)。部屋の小さな窓から光が差し込む穏やかひとときのように、身につけることで気分がやすらぐジュエリー。駒崎淑栄さんは自身のブランドに温かな想いを込めた。ずっと一緒にいたくなるジュエリーは身体にフィットしているもの。テーブルに置いて眺めても美しい高級感も大切だ。そのために駒崎さんは、自身でデザインして制作するハンドメイドの道を選んだ。アトリエに揃えた制作用のマシンに日々向かう彼女のモノづくりを追った。
繊細でラグジュアリーなcomado


ECショップやオーダー会などで顧客の注文を受けてから生産するのがcomadoのスタイル。リングの基本サイズは7〜20号。この範囲外でも相談しだいで制作可能なのは、制作者である駒崎さんが自ら話を聞いて判断するからこそ。
商品の主な素材はゴールドの18K。肌なじみのいいゴールドに小さなダイヤをちりばめ、優しさときらめきを表現。金属の表面をマットに処理して冷たい印象にならないように仕上げている。角は丸く削られ、肌に負担を掛けず軽やか。重ね付けもしやすい。駒崎さんが以下のように自身の作風を語った。
「量産できない技術を用いたジュエリーです。シンプルでありつつ一点一点に個性があります。ゴールドとダイヤを使うのは、制作者である私自身が好きな素材であることが大きな理由です。石を主張する宝飾品とは考えておらず、金属に石がアクセントとしてくっついているようなイメージです。デザインが生まれるのは手を動かしてジュエリーを制作しているとき。余ったパーツなどを見て『これ素敵』と感じてヒントにすることが多いです」
comadoが掲げるスタイルは「シンプル、シック、ユーモア」。大人の洒落心に満ちている。
ブライダルジュエリーの技術を込めて

上写真のリングはcomadoのシグネチャー「INSIDE ring」。内側にダイヤ、ルビー、サファイアなどをぎっしりと並べたアート感覚の逸品。身につける人が満足する、内に力を秘めた存在。外して彫刻のように飾ってもいいし、チェーンをつけてペンダントにも。このさりげないラグジュアリーさがcomadoならではのスタイルだ。

このリングの制作は緻密な作業の繰り返し。石を入れる穴が内側につらなるゴールドのリングを最初につくり、その穴にひとつひとつ石をはめ込んでいく。石の固定はごく小さな爪(フック)を引っ掛けようにして行う。その爪をごくわずかな力を掛けたハンマーで叩いて折り曲げる。すべてにミスがないよう完璧に仕上げるのは高度な技術によるもの。素材が高価だから作業もより慎重になる。


「技術を磨いたのはブライダルジュエリーでの経験です。高級素材を扱い高い技術力も求められる仕事現場で約8年間働いていました」
駒崎さんはしっかりとキャリアを重ね、技術とセンスを磨いてから独立した。「もっとつくりたいものを、つくっていきたい」その想いが自身のブランド立ち上げへとつながった。
ファッションサマーセミナーで知った
ジュエリーの楽しさ

「とにかく文化服装学院に入学したかったんです。何を勉強するかも決めていないときから」
駒崎さんが高校時代を振り返り当時の気持ちをこのように語った。
「母が文化の服装科の卒業生なんです。子供のわたしの服をつくってくれていました。母から学校の話を聞き進学の目標を文化に定めました。コースを選ぶため夏休み期間に開催されるファッションサマーセミナーに参加。ニット、ジュエリーと体験したなかで、感動したのがジュエリーでした。シルバーを削りリングをつくる講座です。金属を自分でいじって好きな形にできることが衝撃でした。それまで金属を加工するには大規模な工場が必要だと思っていましたから。小さなスペースで作業できることを知った大きな出来事です」

文化で選んだコースはグッズ類を扱うファッション工芸専門課程。3年間でさらに発想力も広がっていった。
「すごく大きなコスチュームジュエリーもつくりました。素材も紙などの日常的なものを組み合わせるようになって。毎日身につけるアクセサリーとは別の発想が生まれたのは文化に通ったからこそだと思います」
卒業後に就職したのはオーダーメイドのウェディングジュエリーの会社。会社を決めるときにも駒崎さん流の考え方があった。
「ジュエリーづくりを長く仕事にしていくためには最上級の技術を身に着けるべきと思いました。勤めた会社はすべての工程をひとりで担う制作方法を採用していました。オーダーメイドだからこそ分業制にしなかったのでしょう。おかげで一生ものの質の高いジュエリーをつくれる自信がつきました」
働くうちに独自の創造への気持ちが高まり、独立してデザインから制作まで自身で手掛けるcomadoをスタートさせた。

埼玉・浦和にある彼女のアトリエは広くクリーンで清潔。個人のジュエリー作家とは思えないほどの本格的なマシンを揃えている。砂を吹き付けて金属表面をマットに加工するサンドブラストは、舞い散る粉塵を外に逃がすため窓際に置かれている。上写真の両手を差し込む実験器具のようなマシンは、レーザーを当て熱加工するために使うもの。ジュエリーの修理でも使われる。
ほかにも下写真の研磨のマシン、金属メッキ用のマシンなどがずらりと並ぶ。すべてはハイクオリティなジュエリーをつくるために。

ポップアップショップでオーダー会も
comadoの主な販売方法はECサイトでの受注。原則として在庫を持たず、オーダーされたものを丁寧に制作していく。ごく一部のセレクトショップにはレディメイド品を卸している。さらに注目すべきは不定期に開催されるポップアップショップだ。年に数回行うレギュラーの店が、「ザ・コンランショップ 丸の内店」。ハイセンスなセレクトで名高いイギリス発祥のインテリアショップである。comadoのジュエリーを直接手に取れる貴重なチャンス。駒崎さん自身も店に立ち客を出迎える。

「コンランショップでの展開は知り合いからの紹介です」と駒崎さん。過去の開催では懐かしの文化の同級生がやってきたサプライズもあったそうだ。
「RIOWAというレザーグッズブランドを東京・台東区で運営している奥西くんが、突然店に来てくれました。わたしの活動を気にしてくれていたようです。RIOWAを一緒にやっている奥様と一緒のご来店でした」
文化つながりが続いていることを物語るエピソードである。
自身がコントロールできる範囲で顧客に上質なジュエリーを届ける駒崎さん。顧客と対話するパーソナルな立ち位置が心地いい。長く深く愛せるアイテムを望む人が増えた現代の感性にフィットするジュエリーを創造するクリエイターだ。

※2024年2月取材
LINKする卒業生 ・奥西了和 ファッション工芸専門課程 バッグデザイン科卒業 レザーグッズRIOWA運営 https://www.instagram.com/riowa.jp/reels/ ・中原隆将 ファッション工芸専門課程 シューズデザイン科卒業 ダブルフットウェア運営 https://www.instagram.com/doublefootwear/ 「奥西さんはcomadoのポップアップショップに遊びに来てくれる同級生で、中原さんは工芸科の先輩です。中原さんとは同級生を通じて知り合いました。浅草に靴の工房を構えていましたが、現在は福岡に拠点を移しています」 |
記事制作・撮影(取材)
一史 フォトグラファー/編集ライター
明治大学&文化服装学院(旧ファッション情報科)卒業。編集者がスタイリングも手がける文化出版局に入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。撮影・文章書き・ファッション周辺レポート・編集などを行う。
Instagram:kazushikazu
関連サイト
-
comadoの公式サイト。https://www.comado-jewelry.com/
-
comadoの公式インスタグラム。https://www.instagram.com/comado_jewelry/
INTERVIEW
comado
ジュエリー
デザイン・制作
駒崎淑栄(こまざき・よしえ)
ファッション工芸専門課程 ジュエリーデザイン科 2006年卒業
埼玉出身。高校時代に文化服装学院のファッションサマーセミナーに参加しジュエリーの楽しさに気づく。文化に入学して3年間学び、卒業後にウェディングジュエリーの会社に入社。最上級のジュエリー制作技術を習得。独立して2015年に自身のブランド、comadoをスタート。
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Vol.043

SENSE OF PLACE by URBAN RESEARCH デザイナー 中上大介
ファッション工科専門課程 アパレルデザイン科
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次回のVol.43は、ベーシックでカジュアルな日常着が多いアーバンリサーチに勤めて、トレンドを意識した若い世代向けブランドの企画を担う中上大介さん。大手企業で働く仕事の秘訣から入社面接のヒントまで語ってもらった。
INTERVIEW
comado
ジュエリー
デザイン・制作
駒崎淑栄(こまざき・よしえ)
ファッション工芸専門課程 ジュエリーデザイン科 2006年卒業
埼玉出身。高校時代に文化服装学院のファッションサマーセミナーに参加しジュエリーの楽しさに気づく。文化に入学して3年間学び、卒業後にウェディングジュエリーの会社に入社。最上級のジュエリー制作技術を習得。独立して2015年に自身のブランド、comadoをスタート。
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SENSE OF PLACE by URBAN RESEARCH デザイナー 中上大介
ファッション工科専門課程 アパレルデザイン科
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