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- Vol.041 小松美優/シマジリサトシ
MIYU KOMATSU/SATOSHI SHIMAJIRI
TOMWORKS
運営/制作
小松美優/シマジリサトシ
自分たちで縫うからできる、
セミオーダーのデニム

戦前に建てられた2階建ての日本家屋を一軒丸ごとアトリエに使い、手仕事でデニムウェアを仕立てる小松美優さんとシマジリサトシさん。小松さんのオートクチュールの技術、シマジリさんの古着愛がミックスした新発想の上品なワークウェアだ。文化の学生時代に知り合ったふたりがどのような経緯で「トムワークス」を立ち上げたのか?なぜ自ら縫う服づくりを選んだのか?ミュージシャンのカネコアヤノが愛用し、ファッション誌ヴォーグのウェブでも紹介される彼らに興味津々で東京・阿佐ヶ谷のアトリエを訪ねた。
トムワークスの深い個性

トムワークスが使うデニム生地は、洗う前の糊がついたもの。「リジッド」「生デニム」と呼ばれる20世紀前半のワークウェアの仕様だ。洗うとサイズが大きく縮むが、着る人の身体に馴染みやすいよさがある。着古した印象がなく、製品がパキッと仕上がる点もメリットだ。トムワークスの服がスタイリッシュなのはこの生地使いが理由のひとつだろう。産地は岡山県の児島と井原である。
さらにカッコよさを生む大切な要素がシルエット。尻周りがコンパクトで裾広がりのフレアが基本形だ。1970年代のヒッピーやフォークの音楽シーンを彷彿させるシルエットは、いまのファッショントレンドとも合致する。
「歴史的な服にインスパイアされていますが、単に復刻させたデザインではありません」
ふたりがそのようにトムワークスのエッセンスを語った。
「1880年代のパンツと1970年代ほどまでのデニムを融合させています」


ディテールはクラシックな服、でもシルエットは現代的。裾幅だけを広げた70年代スタイルとも異なる全体的に太いバランス。あたかも過去に存在しなかった架空の世界のビンテージのようだ。モードアイテムを組ませてコーディネートしても自然に馴染む。



小松さんは文化のオートクチュール専攻でドレスを縫う技術を学び、シマジリさんは大学卒業者が通う服飾研究科で1年間服づくりのノウハウを身につけた。お洒落な学生同士が刺激し合い、ファッション情報が飛び交う文化に通ったからこそ、トムワークス独自のスタイルができあがったのかもしれない。
セミオーダーの1点ものを主軸に
ふたりは共にアパレル企業勤めをせず、ゼロからブランドを立ち上げて運営している。デニムを軸にするコンセプトは文化の先生との関わりが大きかった。シマジリさんが以下のように経緯を語った。
「服飾研究科の卒業制作でどんな服をつくるか考えていたとき、服の歴史に詳しい朝日 真先生に相談してデニムをアドバイスされました。古着好きな自分の感覚に合うこともありますし縫いやすかったのも理由です。それがデニムブランドの立ち上げにつながりました」

劇団四季の衣装部で働いた経験を持つ小松さんが友人のシマジリさんに話をもちかけられて参加を決めたのも、「自分で縫える」ことが理由だった。
「劇団四季は既存の衣装を活用する仕事が中心でした。服をつくることに集中したくなったとき、デニムなら可能に思えたのです。ドレッシーなデニムを仕立てるなら、オートクチュール専攻で得た技術が充分に役立つと思いました」
小松さんは好きな服のひとつとして、フランス軍の40~50年代のM35ロングコートを挙げる。戦場で着るミリタリーウェアなのにシルエットはエレガント。ワーク、ミリタリーの可能性の高さを発見した服だ。

既製品をつくり店に卸す一般のアパレル企業のやり方でなく、自ら生地を裁断して縫うセミオーダーでブランドをスタート。インスタグラムで告知して各地でオーダー会を開き、その場で客の身体を採寸して受注。客に届く完成品は限りなくその人の体型に合う特別な一着だ。
文化の学生も働くアトリエ

生活感のある現在のアトリエには、黙々とミシンに向かう一般的な縫製工場とは異なる温かみがある。幾つもにわかれた部屋にミシンが点在して、小松さんとシマジリさんも往復しながら一着の服を仕上げていく。ふだん笑顔なスタッフたちも作業になると真剣な表情に切り替わる。

アトリエに手伝いに来ている人のなかには文化服装学院に通っている学生も。そのひとりの工藤さんは小松さんの専攻と同じオートクチュール専攻の3年生だ。卒業してからはどんな仕事を?
「衣装製作の会社に内定が決まっています。4月からはそちらでお世話になる予定です」
たくさんある学校の課題の合間にプロの現場を手伝うほど服づくりに熱心な彼女。就職先でもきっと大活躍するだろう。

アトリエにはデニムづくりに必要な機械が揃えられている。デニムによく使われる縫製効率がいいチェーンステッチ用のミシンはないが、縫い糸がほつれず頑丈な本縫いで仕立てるのが彼らのオリジナルスタイルだ。
森星、カネコアヤノ、ヤマハ発動機らに
サポートされて
トムワークスが始動したのが20年6月。現在まで約4年の間にブランドの知名度を上げる有力な出来事があった。そのひとつがモデルの森星さんがメディアで紹介したこと。
「メディアの撮影で着てご購入いただいた森星さんが、22年にヴォーグ ジャパンでの1週間コーディネート紹介動画でデニムのセットアップを紹介してくださいました。トムワークスが評価されるようになった嬉しい出来事です」
※トムワークスの紹介は13分50秒からの「SUNDAY」にて。
ミュージシャンのカネコアヤノも愛用してステージでも着用している。

24年にはバイクのヤマハ発動機とコラボレート。ダメージ加工したコラボ服に加え、様々なクリエイターたちの協力の元でデニムとバイクを一体化させたアートオブジェを制作。バイクとデニムという王道の組み合わせに新たな息吹を与えた。
大手バイクメーカーとコラボした背景には顧客とのつながりがある。
「お客様にヤマハ発動機の方がいまして、その方のお考えで今回の企画が実現しました」
客と直接対話する服づくりだからこそ生まれるつながりがある。眼の前に表れた挑戦に挑む姿勢がふたりのブランド運営を支えている。
学生時代から現在まで

小松さんがファッションの道に歩みを進めたのは、中学から高校のとき。出身である長野の高校を選ぶときに、ファッションショーを行う服づくりの部活があることを決め手にしたほど服に夢中だった。
「ですが念願のその部活に入ったら、同級生はわたしひとり(笑)。翌年には後輩たちがたくさん入ってきました」
服を縫うことに関心が深く、文化でもオートクチュール専攻に通った正統派だ。学校を卒業して劇団四季で働いたのはディズニーの世界観に惹かれていたから。
「子どものころからディズニーが好きでした。劇団四季でディズニー演目に関われることに魅力を感じて入社」
幅広い業務をする生活のなかで、しだいにオリジナルの服をつくりたい気持ちが大きくなった。彼女はマメ クロゴウチのようなモードにも深い関心がある。独立してシマジリさんと共にトムワークスを立ち上げた。

一方でシマジリさんの経歴もユニークだ。元バンドマンのギター・ボーカルで、地元である大阪の大学に通いつつプロを目指して音楽活動していた。しかしバンドは芽が出ず、働いた音楽関係の仕事も19年の新型コロナの蔓延で続けられなくなってしまう。
「そのとき昔から古着が大好きだったことを思い起こしました。服の仕事を目指してみようと東京に出て文化に入学」
その時代に小松さんと友人になり課題を手伝ってもらう間柄に。彼がデニムブランドの構想をはじめたとき、声を掛けたのが信頼している小松さんだった。

「願わくば店とアトリエを併設するスペースを構えたい」と語るふたり。購入しやすい価格帯の既製服も計画中だ。
アトリエを訪れて話を伺っていると、ふたりのニュートラルで柔軟な人柄がよく伝わってくる。「この人たちにならオーダーしてみよう」とまで思わせる味わいに満ちている。彼らが生む穏やかな空気と、硬派なデニムとが混ざり合うトムワークス。ずっと長く着るパーソナルな、いま求められるファッションの姿がここにある。
■information
文化学園ファッションリソースセンターにトムワークスがやってくる!

1月20日(月)から31日(金)まで、F館地下1階ファッションリソースセンターギャラリーにてトムワークスの個展が開催。ヤマハとコラボしたバイクオブジェをはじめ商品も並ぶ。彼らの世界を体感できる貴重なチャンスを見逃しなく!
※2024年12月取材
LINKする卒業生 ・宮田夏帆 服飾専攻科オートクチュール専攻 2019年卒業 ぬいぐるみ作家 www.instagram.com/yarila.doll/ 「小松の同級生です。毎朝1時間半かけ誰よりも早く登校している優秀な生徒でした。刺繍などの手作業がとても得意。 でもパン一斤をロッカーに入れて1週間かけて食べる不思議な子でもありました(笑)」 |
記事制作・撮影(取材)
一史 フォトグラファー/編集ライター
明治大学&文化服装学院(旧ファッション情報科)卒業。編集者がスタイリングも手がける文化出版局に入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。撮影・文章書き・ファッション周辺レポート・編集などを行う。
Instagram:kazushikazu
関連サイト
-
トムワークスの公式インスタグラム。https://www.instagram.com/tomworks_official/?hl=ja
-
トムワークス公式サイトhttps://tomworks.jp/
INTERVIEW
TOMWORKS
運営/制作
小松美優(こまつ・みゆ)
服飾専攻科オートクチュール専攻 2019年卒業
長野出身。地元の高校を卒業後に文化に入学。卒業後に劇団四季の衣装部に就職。退社したのち2020年にトムワークスを設立。
シマジリサトシ
服飾研究科~服飾専攻科デザイン専攻 2020年卒業
大阪出身。大阪の大学に通いバンド活動に従事。音楽関係の仕事を経て上京し文化に入学。卒業年の2020年にトムワークスを設立。
NEXT
次回のVol.42は、伊勢丹やコンランショップなどでポップアップショップを開くジュエリーブランドcomadoの駒崎淑栄(こまざき・よしえ)さん。有名ショップが認める彼女の手づくりの実力とは!?
INTERVIEW
TOMWORKS
運営/制作
小松美優(こまつ・みゆ)
服飾専攻科オートクチュール専攻 2019年卒業
長野出身。地元の高校を卒業後に文化に入学。卒業後に劇団四季の衣装部に就職。退社したのち2020年にトムワークスを設立。
シマジリサトシ
服飾研究科~服飾専攻科デザイン専攻 2020年卒業
大阪出身。大阪の大学に通いバンド活動に従事。音楽関係の仕事を経て上京し文化に入学。卒業年の2020年にトムワークスを設立。