プリンセスの心をいつまでも
Kanako Tamuraで届ける想い

社会人を経て文化服装学院へ。学んだ日々を「人生でいちばん充実した2年間」と喜びを口にする田村佳奈子さん。在学中からはじめたKanako Tamura(カナコ タムラ)は、おとぎ話のプリンセスのチャーミングさと芯の強さに満ちたブランド。幼い頃から憧れた世界を、現代を生きる女性たちと共有する田村さんのブランド運営に迫った。
ポップアップショップ@ビームス ウィメン 原宿

Kanako Tamuraのポップアップショップが、2026年5月に東京・ビームス ウィメン 原宿にて行われた。犬塚朋子ディレクターが率いる、個性が際立つフェルメリスト ビームスでの開催。土日には田村さんも店を訪れ、来場者たちとの会話や接客を楽しんだ。

田村さんはディレクター兼デザイナーであり、運営者でもある。世界観の構築からアイテムデザイン、ブランド計画までひとりで手掛けている。主な販売方法は公式オンラインストアが中心。大手セレクトショップであるビームスとのつながりは、ディレクターの犬塚さんが展示会に来てくれたことから。
「お手紙を書いて展示会にお招きしました。それが縁でフェルメリスト ビームスで取り扱っていただけるようになりました。店内でファッションショーをしたり、受注会のポップアップショップを行ったり、とてもよくしていただいています」
そのように彼女が関わりの経緯を語った。ファッション業界の有名人である犬塚さんにアプローチしたのは、知り合いのファッションライターの勧めがあったため。業界に詳しい人と親しくなると、ファッション業界に入っていく近道になる。


田村さんは店頭に立ち、来場者と直接やり取りすることにワクワクするようだ。
「とても楽しくやらせていただいています。ポップアップショップのお客さまは、8割がたがブランドのインスタを見てお越しいただく人たち。わたしのこともご存知の方が多いです」
SNSの活用がリアルな販売現場でも大いに役立っている。

大学の商学部でマーケティングを学んでいたときから、B to C(ビジネス・トゥ・コンシューマー)へ関心が深かった。メーカーが直接客とやり取りする販売方法だ。ブランドや会社を自身で運営する仕事を目指して歩んできた田村さんには、接客もブランド発信の大切なプロセスのひとつ。
「気づきがたくさんあるんですよ。皆さんのいろんな意見を聞くと。例えば『服のこの部分がちょっとキツいです』や『こういう服がほしいです』という声を知ると、次の服作りのヒントになります」
彼女が願う「優しさや温かさで人を包む服」の実現には、ファンとのコミュニケーションが欠かせない。

「お客さまから『いい大人になった自分でも着られる夢がある服ですね』と言われるときがとても嬉しいです。着たときに優しい気持ちになれる服を目指していますので。その一方でKanako Tamuraはファンタジーだけでなく、女性たちの日常に寄り添う服でもあります。ときに憂鬱な気分で凹んでしまう自分自身をも許容できる服でありたいと願っています」
乙女心を消し去らず、大人女性の感性と共鳴するパーソナルなブランドのあり方だ。
ディズニープリンセスがルーツ
田村さんのファッション観のルーツを辿ると、幼少期に夢中だったディズニー映画の主人公たちに行き着く。華やかなドレスをまとったプリンセスはしっかりと意思を持ち、行動的に周囲の人々を導いていく。しなやかなフェミニンさに加え、内面の葛藤をも内包するのがKanako Tamuraのエッセンス。


ここに掲載した26-27年秋冬コレクションのテーマは『不完全な美』。
「シーズンのデザインをはじめるとき、いつも物語のような情景を思い描きます。今回イメージしたのは不完全な自分に落ち込んでしまった女の子。誰でも日常のなかで鬱っぽくなることがあるでしょう。そんな自分を受け入れられる服にしたいと考えました」
空想したシーンは次のようなもの。
「憂鬱になった子が温かな布団にくるまれている部屋。その子が住んでいる部屋です。満開の花や緑が描かれた油絵が飾ってあって。家で過ごしていることから、下着っぽいディテールも服にしました。室内の絵画から採用した要素も入れつつ」

不完全を受け入れる美学には、日常的な気づきも息づいている。
「近所に咲いている花を眺めたときがあります。なかには枯れている花もありました。でもそれが混じっている不完全さに美を感じたんです。この秋冬コレクションのワードである“不完全”はそのようなものの見方でもあって」
Kanako Tamuranの“甘さ”には、ピリッとスパイスが効いている。シルエットにメリハリがあり、シャープな造形も顔を覗かせる。韓国のガールズグループがクールなダンスウェアに可愛いアイテムをつけ足してお洒落するように、ストリートスタイルと組ませても魅力的になりそうだ。そのことを田村さんに伝えると興味深い答えが返ってきた。
「ルーツはディズニープリンセスなのですが、大人になってからKポップが好きになり韓国にもよく行くようになりました。Kanako Tamuraの立ち上げ前にスマホケースをつくり、韓国で販売したくて営業したこともあるほど」
モードとして時代を捉える目線が、彼女の服をグローバルなテイストに押し上げている。

文化服装学院で見つけた、
「やりたかったこと」
田村さんが選んだ文化服装学院のコースは服飾研究科。大学、短大、高等専門学校卒業者を入学資格にした1年間の集中コースだ。大学を卒業してB to Cのビジネスを学ぼうと家電メーカーに就職するも、シュシュやスマホケースなどのファッションアイテム作りを続けていた。憧れだったファッションの道に進むことを決意したのは、阪急うめだのバイヤーの目に留まりコンタクトがあったこと。
「インスタで発信していた商品をバイヤーさんが見てくれて、ポップアップショップの依頼が来たんです。仕事対象をファッション分野に定める覚悟ができた出来事でした」

メーカーを退社して4月に文化に入学し、8月にはOEM生産の会社を見つけ8型の服を制作。学校の課題をこなしつつブランドをスタートさせた。
「最初は担任の先生にもお伝えせず独力ではじめました。そのうち知られるようになり応援してくれるように」
1年間を過ごしたあとに、さらに高度な専門知識や技術が習得できる服飾専攻科 技術専攻に進学。立体裁断も覚えていき、Kanako Tamuraのパターンも自身で手掛けるようになった。学校で教わった技術をフル活用しながら。
「2年目でとても役立ったのが、オールミシン縫製も教えてくれたこと。文化は原則として“手縫い”ありきの学校ですよね。服飾研究科と技術専攻で学んだ経験ではそう感じました。もちろん手縫いが服作りの基礎なのですが、アパレル業界で工場が行うのはミシン縫製です。ブランド運営者として実践的な知識を得られたのが嬉しかったです」
文化に入りもっとも抱いた感情は次の通り。
「『わたしがやりたかったことはこれなんだ!』。文化に入り深く実感したのはその想いです」

「大学時代は周囲から浮いていたかもしれません。でも文化ではそんなことがありませんでした」
そう語る彼女は2年間を居心地よく過ごせたようだ。この学校には趣味嗜好が様々な人が世界中からやってくる。でも“服好き”なことで皆が共通している。服が好きなら学内で決して浮くことはない。
彼女の将来のブランディング構想は、まず第一歩として東京が中心の顧客を全国に広げること。さらに3年後には海外に進出する計画も練っている。
「アートのように世界観を表現できる場がKanako Tamura」。
田村さんがそう語る独自のプラットフォームを、世界のファッションシーンで目にする日も遠い先ではなさそうだ。
※2026年6月取材
LINKする卒業生 ・太田康葉 服飾専門課程 服飾研究科/服飾専攻科 技術専攻卒業 ベイクルーズ勤務 ジャーナルスタンダード Web visual coordinator https://www.instagram.com/otayasuha_______ ・赤澤雛子 服飾専門課程 服飾研究科/服飾専攻科 技術専攻卒業 Nahikoデザイナー/ニット作家 https://www.instagram.com/hinako_akazawa/ 「ふたりとも服飾研究科でも技術専攻でもクラスが一緒だった同級生。太田さんは大手セレクト業態の会社に勤め、赤澤さんは藝大卒のユニークな経歴で作家活動をしています。それぞれ自分らしい道に進み活躍している友人です」 |
記事制作・撮影(取材分)
一史 フォトグラファー/編集ライター
明治大学&文化服装学院(旧ファッション情報科)卒業。編集者がスタイリングも手がける文化出版局に入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。撮影・文章書き・ファッション周辺レポート・編集などを行う。
Instagram:kazushikazu
関連サイト
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Kanako Tamuraの公式サイト。https://kanakotamura.com/
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Kanako Tamuraの公式インスタグラム。https://www.instagram.com/kanakotamura_official/
INTERVIEW
Kanako Tamuraデザイナー
田村佳奈子
服飾専門課程 服飾研究科/服飾専攻科 技術専攻 2024年卒業
東京出身。慶應義塾大学 商学部を卒業し、家電メーカーに就職。幼い頃から好きだった世界観をファッションを通じて表現することを決意して、退社後に文化服装学院に入学。自身のブランド、Kanako Tamuraの設立は在学中の22年。卒業した25年10月にビームス ウィメン 原宿にてフェルメリスト ビームスのディレクションによるフロアショーを開催。現在公式オンラインストアでの販売を中心に販路を広げている。
INTERVIEW
Kanako Tamuraデザイナー
田村佳奈子
服飾専門課程 服飾研究科/服飾専攻科 技術専攻 2024年卒業
東京出身。慶應義塾大学 商学部を卒業し、家電メーカーに就職。幼い頃から好きだった世界観をファッションを通じて表現することを決意して、退社後に文化服装学院に入学。自身のブランド、Kanako Tamuraの設立は在学中の22年。卒業した25年10月にビームス ウィメン 原宿にてフェルメリスト ビームスのディレクションによるフロアショーを開催。現在公式オンラインストアでの販売を中心に販路を広げている。


