有名PRオフィスメンバーの、
仕事ぶりに密着!
文化服装学院の卒業生たちの現在を追う、“文化つながり”のインタビュー集「LINKS(リンクス)」。今回フィーチャーするのは、アタッシェドプレス集団「4K[sik](シック)」に勤める高橋真璃乃さん。
アタッシェドプレスとは、さまざまなクライアント(ブランド)と契約して宣伝活動(PR)を行う人。主に2000年代以降に欧米のファッション業界に倣い日本でも定着した仕事である。スタイリストがミュージシャンや俳優に着せる服を探すのも、エディターが情報を得るのも、SNSで発信するインフルセンサーが頼りにするのもアタッシェドプレス。彼らこそが最新ファッションを世に伝える、なくてはならない“裏方”なのだ。ファッション周辺の知り合いの数の多さも業界No.1。
そんな彼らが所属する4K[sik]は、カジュアルな社風で知られる有名どころ。入社して4年近くが過ぎた高橋さんの仕事ぶりと、文化つながりの仕事仲間との関係に迫った。
●仕事1 プレスルームという職場。
フランス語のアタッシェドプレスは、ファッション界での独自の呼び名。取り扱い対象がファッション分野でなければ、総括して“PRオフィス”と呼ばれるのが通例である。高橋さんのデイリーな仕事内容は、
1. サンプルの貸し出し、2. サンプルの管理、3. 担当ブランドのニュースリリースの制作。
職場はショップのように各ブランドの服や小物のサンプルがずらりと並ぶプレスルーム(ショールーム)だ。工場への量産発注見本であるサンプルを、宣伝活動にも活かすためのスペースである。
この日にプレスルームにやってきたのは、同じ文化服装学院(以下、文化)卒業生で親しい友人でもあるスタイリストの菅沼 愛さん。
「菅沼さんは毎週のように来てくれますね」
と高橋さん。親しくなったのは互いが卒業してからだそう。
4K[sik]はブランド担当制で、高橋さんの担当はデニムの「リー」「ラングラー」、日本デザイナーズの「フィルザビル」「ビリティス・ディセッタン」「カイコー」。プレスルームに来る人たちはさまざまなブランドを見にくるため、ほかブランドのことも知っておく必要がある。どのアイテムがどこに貸し出されたのか、いつ返却されるのか把握する管理能力も必要だ。ルーズな性格の人は現場ワークに向かないかもしれない。
高橋さんはスタッフ募集を目にして応募した、いわば正統派の入社。知り合いつながりによる採用が多いPRオフィスとしては、ある意味で異例のメンバー入りだ。
「学生時代からアタッシェドプレスへの憧れがありました。文化を卒業して約3年間ショップに勤めまして、ネットで募集を目にしました。ダメ元での挑戦でしたが、無事にチームの一員に」
4K[sik]で働きはじめて、彼女が人との接し方で販売員と真逆と感じたことがある。それは、「人との距離を縮めていい」、ということ。
「前職の売り場は百貨店でした。そこではお客様と馴れ馴れしい関係になってはいけないと教育されていて。ライン交換などはNG だったんです。いまではまったく逆。上司からはむしろ、『公私の区別をつけるな』と言われます」
多くの人と密な関係を築き人を呼べるスタッフは、すなわち「仕事ができる」ということ。宣伝業務ならではの性質を物語る一例である。
●仕事2 合同展イベントを企画。
ブランドの宣伝業務に加えて、営業活動も行う4K[sik]らしい試みが、小規模なアクセサリー/ジュエリーブランドを集めた合同販売イベント「プラネット ナイン(Planet nine)」。21年11月に社内にあるギャラリー兼スタジオで開催したこのイベントを企画したのが高橋さんだ。
「EC販売が中心の6ブランドにお声がけして参加していただきました。探したやり方は主にインスタグラムです」
コロナ禍以降にファッションの流れは、流行を追うものからパーソナルなものへと大きくシフトした。知る人ぞ知る自分だけの愛用アクセサリーの存在は、これからもっと大きくなっていくのかもしれない。
●仕事3 オフィス内の文化つながり
4K[sik]に務める12名のうち、文化の卒業生がなんと3名も!高橋さん、橋本 奎さん、渡辺 高さんである。
なかでも渡辺さんは「リー」「ラングラー」の共同担当者として日々の業務をともに行う間柄。カリスマストリートブランド「シュプリーム」の日本でのPRスタッフ経験を持つベテランの渡辺さんから見た、高橋さんの評価とは?
「まじめでコミュニケーション能力が高い人。年上に好まれるタイプです。失敗して叱られてもメゲないのもいいですね。褒めても叱っても、どちらでも伸びるタイプです。一方で課題なのは、打ち合わせやプレゼンのときスムーズに言葉をつなぐスキルを身につけることでしょうか。まだ少し経験不足かもしれません。この力があれば、クライアントからの信頼感がより増すでしょう」
大先輩からの真摯なアドバイスは、しっかりと彼女の心に響いたようだ。
●学生時代 「やっぱり文化祭!」
高橋さんがファッションの仕事に興味を持ち始めたのは高校生のとき。ファッション好きの一学年上の先輩の影響だった。その先輩も入学した文化の文化祭に、友達と行って観たファッションショーが衝撃だった。
「パンチ力が凄くて!」
ファッション流通科に入学してからも、「文化といえば文化祭」とばかりに積極的に参加。在校生約1,000名が運営する大ファッションショーのなかで高橋さんが希望した役割は、ショーに訪れた客が並ぶ行列を整理し、席に案内する係。残念ながらその担当にはなれなかったが、舞台裏の重要な役割であるモデルへの服の着せ付け(フィッター)を担当。お祭り気分を存分に味わった。
いまもよくコンタクトを取る文化卒業生は、卒業してから親しくなったり新たに出会うケースが多いそうである。個性派揃いの文化生には、どこか共通する世界観がある。モノづくりへの関心の深さは誰にも負けない。“つくる”こと、それを支えることが文化生のアイデンティティ。宣伝もまた、クリエイティブな活動のひとつだ。多くの人にファッションの楽しさを伝えようとする高橋さんの活躍に期待したい。
※2021年12月取材。
LINKする卒業生 (記事登場者) ・菅沼 愛(ファッション流通科スタイリストコース卒業) マネージメント「TRON」 https://www.tronmanagement.com/ ・渡辺 高(スタイリスト科卒業※現:ファッション流通科2年スタイリストコース卒業) ・橋本 奎(インダストリアルマーチャンダイジング科卒業) https://www.instagram.com/_hsmt/?hl=ja |
記事制作・撮影
高橋 一史 ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院(旧ファッション情報科)卒業。編集者がスタイリングも手がける文化出版局に入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。モノ書き・編集・ファッション周辺レポート・撮影などを行う。
一般公開メールアドレス:kazushi.kazushi.info@gmail.com
関連サイト
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4K[sik]を運営するGMPCの公式サイト。http://www.gmpc-japan.com/
INTERVIEW
4K[sik]
アタッシェドプレス
高橋真璃乃(たかはし・まりの)
1994年、宮城生まれ、埼玉育ち。2013年、ファッション流通科に入学。15年、同ショップスタイリストコースを卒業。大手アパレル会社に入社し約3年間百貨店で販売業務を経験。転職して18年6月、4K[sik]のアタシュッドプレスに。
INTERVIEW
4K[sik]
アタッシェドプレス
高橋真璃乃(たかはし・まりの)
1994年、宮城生まれ、埼玉育ち。2013年、ファッション流通科に入学。15年、同ショップスタイリストコースを卒業。大手アパレル会社に入社し約3年間百貨店で販売業務を経験。転職して18年6月、4K[sik]のアタシュッドプレスに。