NOZOMI NAKA

ユナイテッドアローズ
ショップスタッフ
仲 希望

全国8万人の頂点に立った、
トップスタッフの実力

ユナイテッドアローズに勤めて約21年。育児休暇も挟みながらショップスタッフを続け、有能ぶりが社内で評判の仲 希望さん。ネットのスタイル投稿数、PV数、フォロワー数でも社内トップクラス。2023年に他社を含む約8万人が応募した「STAFF OF THE YEAR 2023」に出場しグランプリを受賞!デジタル接客力、コーディネート力で全国のショップスタッフの頂点に立った。家庭も仕事も両立させて走り続ける仲さんの仕事現場に密着!

本社でのインスタライブで
新作をアピール

子どもの入学式などのセレモニー用ウェアを提案したインスタライブ。

「誰かの役に立っているという実感が、わたしがこの仕事を続ける大きな理由のひとつ。お客さまのお役に立ちたくて」
そう語る仲さんは積極的に新しい販売スタイルに取り組む。スタイル投稿、インスタライブなどネット関連の割合が増えている。新しい取り組みは主に会社からの提案によるもの。
「『やらないと!』という思いです。自分のインスタの投稿さえやらなかったわたしには縁遠かった世界に飛び込んでいきました」

この日に参加した3名は、それぞれ別の店に勤めるユナイテッドアローズのスタッフ。

きっかけになった時期は、来店者が激減したコロナ禍。家ごもり需要で好調だったネット販売に、ファッション業界全体が一斉に取り組んだ時代だ。実店舗を大切にするユナイテッドアローズもEC販売を押し広げた。
「全国共通の社内方針として、スタイル投稿に力を入れることになりました。『撮影に慣れていない』などと言っていられない切迫した事態。でも『やるからには頑張ろう』『会社に貢献しよう』と考え、コーディネートや撮り方などを模索しつつ進めていきました」

段取りを確認したり着方をチェックしたり、準備段階でもやることはたくさん。

ネット業務でも仲さんの基本的な姿勢は変わらない。なにより大切にしているのは顧客ファーストな考え方。
「お客さまがなにを望んでいるのかをいちばん考えます。わたしの着方がお客さまの参考になるのか、お薦めするアイテムがお役に立つのか」
仲さんのプロ意識の高さは、金髪の髪色を黒に戻したことからもよくわかる。自身の姿を顧客に近づけるためだ。
「わたしと同世代の女性ですと、ファッション業界の人でもない限り金髪で社会生活するのは難しいと思います。皆さんのご参考になれるように髪の色を黒にしました」
ショップスタッフは店が示すスタイルアイコンでもある。自由でいいとする風潮もあるなかで、仲さんは年を重ねた自分自身と顧客とを重ね合わせている。ベテランだからこそ辿り着けたひとつの境地に違いない。

公式ECサイト掲載の
モデルも

東京都内スタジオにて、プロにヘアメークしてもらいながらのファッション撮影。

ユナイテッドアローズ公式サイトに掲載される新作ルック写真にモデルとして参加。STAFF OF THE YEAR 2023グランプリ受賞の反響も受けて会社から依頼された業務のひとつだ。
「制作スタッフの方々の意向でつくられる写真です。自撮りして自ら写真を選び投稿するのとは異なりますから、まだ慣れない点もあります。とはいえ今回は着る服のセレクトにも関わらせていただき、より積極的な気持ちで臨めました」

今回のテーマは「デニム」。この日の撮影特集は、BEAUTY &YOUTH公式サイトにて3月6日(水)より公開中。
コーディネート写真を眺めつつスタッフ間で着こなしを相談。

ファッション界全体として、ショップスタッフが表に登場する機会はコロナ禍以前より確実に増えている。彼女らがお薦めの服を着て登場するビジュアルには、一般的なモデル撮影とは違ったリアリティや親しみやすさがある。顧客の動きをよく知る人たちが生み出す現代のファッション表現だ。

共感で寄り添う、
店頭での接客スキル

仲さんの勤務先は「ユナイテッドアローズ 新宿店」。文化服装学院の学生も行き交うJR新宿駅南口の「ルミネ1」にある。育児中での時短による勤務だが、店頭こそが彼女の居場所なのはいまも変わらない。
「なにより接客を大切にしています。ネット投稿をはじめてからより実感するようになりました。ネット発信だけを行っていると、お客さまのリアルな声から遠ざかってしまいます。お客さまの服装のお悩みを聞けるのは店頭しかありません」

会話をして顧客がなにを着たいか、どのような場で着たいかをさりげなく把握して最適なアイテムを提案。臨機応変に対応を変えていく。

仲さんの接客トークは、顧客の話や意見にまず共感するやり方。アイテムを手に取りながら、自身が買い物で失敗した経験までも正直に話す。そこに「この人ならわかってくれる」「買わなくてもヤな顔されなさそう……」といった信頼感が生まれる。
「相手に合わせる姿勢は、中学生のころがルーツかもしれません。バスケ部に所属していて体育会系で上下関係の厳しさもあり、先輩への配慮や後輩への気遣いができるようになりました。それがいつの間にか身について、それが現在のお客さまとのやりとりや、スタッフ間でのコミュニケーションにつながっています」

出勤日にはオープン前に早出して投稿写真を自撮り。店に来られない顧客が夜中に投稿を見て購入してくれるなど、買い物の役に立っている実感が仲さんの喜びだ。彼女のスタイル投稿はこちらより。

多いときは一日に10本ほどネット投稿する着用撮影は、店の周辺で行う。着替えも、スタンドに取り付けたスマホでの撮影もひとりで担当。他のスタッフに頼らないのにも仲さん流の心遣いがある。
「その人の時間をわたしのために使わせるのが嫌なんです。仕事とはいえ同僚に迷惑掛けたくなくて。ひとりなら早朝出勤して、誰もいない時間に撮り溜めできますから」
自分でやれることは人に甘えないのが彼女の流儀だ。

「やるからにはトップを」の気持ちで
獲得したグランプリ


約2,600(2024年2月現在)ブランドが導入しているスタイリング投稿アプリ「STAFF START」。開発会社のバニッシュ・スタンダードが主催する、“令和のカリスマ店員を発掘する”コンテストがSTAFF OF THE YEARである。この2023年度版に応募した全国のショップスタッフ数は約8万人にもなる(全身コーディネートができるアパレルブランドのみが対象)。オンライン接客の実績なども評価される同コンテストで仲さんが16名のファイナリストに選ばれ、会場の接客ロールプレイング審査と自己PR審査でグランプリに輝いた。

23年9月28日(木)に「渋谷ヒカリエ ホールA」で開催されたSTAFF OF THE YEAR 2023審査会にてトロフィーを手に。photo©UNITED ARROWS

「上司に薦められて応募しました。『ユナイテッドアローズのためにトップにならねば』と、約1年掛けて準備してきました。ネット投稿を増やしたり、髪色を黒にしたのもこのタイミングです。ショップスタッフのあり方を再び見直しました」
ふだんは自己主張をあえて避けるタイプの仲さんが、「勝てる」と思った自信はどこから来たのだろうか。
「応募するにあたり前年の大会で同じ会社の人たちが頑張っているのを見て、わたしもやらないといけなかったと思いました。努力すればわたしも上位に入れると感じました。周囲の方々が応援してくださったことも頑張りにつながりました」
大手新聞社やテレビから取材されるほど人生において大きな出来事になったグランプリ。意外にも仲さんはもう一度参加することを考え中だそう。1位の座から落ちる不安はないのだろうか?
「どうしてもアスリートと自身を比べてしまうんです。アスリートはオリンピックで優勝しても、4年後にまた出場するじゃないですか。1位のままでいたほうがいいのかもしれないと考えつつ、自分のために再挑戦することにも気持ちが動いています。つねに目標があるほうがいいんです」
真面目、素直、誠実……そのような人柄が仲さんの表側とするなら、裏側にある芯の強さは大舞台でこそ発揮されるのかもしれない。

スタイリスト科から
ショップスタッフの道へ

文化服装学院で通ったコースは旧スタイリスト科。スタイリング全般を学びつつ、2年間のなかで働きがいのある仕事を考えていった。
「わたしが通ったスタイリスト科での就職先は、スタイリストか販売員かの2択が主流でした。在学中からスタイリストアシスタントをするような同級生と比べて、わたしはスタイリストにはなれない気がして販売に進みました。ユナイテッドアローズを選んだのは、大手であることが大きな理由です。ちゃんとした会社に就職したかったんです。地元はファッションの販売仕事さえないような田舎でしたから、大手なら両親も安心すると思って」
ショップスタッフもコーディネート力が求められる、スタイリング経験が役立つ仕事だ。

「長男が中学生で、ふたりの女の子は幼く、子どもたちはファッションの仕事をぜんぜんわかっていないようです」と笑う仲さん。

働くうちに “天職”とまで言われる才能を発揮して、全国のトップにまで上り詰めた。3人の子どもたちの育休を経てから復職を繰り返した人生。
「復職しない選択肢がなかったほど自然に職場に戻りました。育休を経た社員の復職率は91%だそうです。皆が私と同じように働く意義を感じているのでしょう」
名実ともにトッププロの仲さんが最後に、ショップスタッフになりたい人へ次のようにアドバイスしてくれた。
「仕事内容で不向きなことを感じてもさほど心配しなくていいと思います。わたしもお客さまへのお声がけが不得意でした。どの店でも教えてくれる先輩がいるから大丈夫です。洋服が好き、人が好き、で成り立ちます」

※2024年2月取材


LINKする卒業生

・鈴木康大(ファッション流通専門課程 スタイリスト科/ファッション流通専攻科卒業)
ユナイテッドアローズ ビジュアル・マーチャンダイザー
・中西里菜(ファッション流通専門課程 ファッション流通専攻科 ファッションディレクター専攻卒業)
ドゥロワー スーパーバイザー/六本木店店長
・髙田麻貴(ファッション流通専門課程 スタイリスト科卒業)
シテン ディストリビューター兼アシスタントMD

「3人は皆がユナイテッドアローズに勤める同僚です。鈴木さんは以前に同じ店にいて、異動で本社勤務になった人。文化の先生とも仲がいいみたいです。セールの忙しい時期に店を手伝いに来てくれることも。中西さんと髙田さんは文化の同級生です」

・宮澤正秀(ファッション流通専門課程 スタイリスト科/ファッション流通専攻科卒業)
ラーメン店 西永福の煮干箱 経営

「同級生の宮澤さんは転職組です。帽子ブランドのプレスを経て、ラーメン好きが高じて食の道へ。西永福の煮干箱は食べログのラーメン百名店に選ばれているほどのおいしさです!文化の子たちもよく来るみたいです」

記事制作・撮影
一史  フォトグラファー/編集ライター
明治大学&文化服装学院(旧ファッション情報科)卒業。編集者がスタイリングも手がける文化出版局に入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。撮影・文章書き・ファッション周辺レポート・編集などを行う。

Instagram:kazushikazu

関連サイト

INTERVIEW

ユナイテッドアローズ ショップスタッフ
仲 希望(なか・のぞみ)
ファッション流通専門課程 スタイリスト科 (現ファッション流通専門課程 ファッション流通科 スタイリストコース) 2003年卒業

三重出身。地元の高校卒業後に文化服装学院に入学。卒業年にユナイテッドアローズに入社。現在、ユナイテッドアローズ 新宿店に勤務。23年にデジタルリテラシーの高いショップスタッフの社内認証制度である「DXセールスマスター」に認定。同認証を受けているのは現在全国で3名のみ。

NEXT

Vol.032

ナノ・ユニバース
企画デザイナー
大澤凱心

Ⅱ部服飾専門課程 Ⅱ部服装科 卒業

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仲 希望(なか・のぞみ)
ファッション流通専門課程 スタイリスト科 (現ファッション流通専門課程 ファッション流通科 スタイリストコース) 2003年卒業

三重出身。地元の高校卒業後に文化服装学院に入学。卒業年にユナイテッドアローズに入社。現在、ユナイテッドアローズ 新宿店に勤務。23年にデジタルリテラシーの高いショップスタッフの社内認証制度である「DXセールスマスター」に認定。同認証を受けているのは現在全国で3名のみ。

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Ⅱ部服飾専門課程 Ⅱ部服装科 卒業