AKARI OZAKI

フラワーデザイナー
doille doillette
尾崎朱梨

スタイリングのように花を操る、ファッション系フラワーデザイナー

 

文化服装学院の卒業生たちの現在を追う、“文化つながり”のインタビュー集「LINKS(リンクス)」。服から花の世界に活躍の舞台を移し、制作と店の運営を行う尾崎朱梨さんが今回の主役。ドライフラワーらを束ねて作品をつくる発想は、彼女が学生時代に学んだスタイリングにも通じている。美を探求する尾崎さんのアトリエを訪ねて、仕事のプロセスに迫った。

ドライ、プリザーブド、造花のミックススタイル

ギフトショップのようにディスプレイされたアトリエのブーケコーナー。企業の受付デスクに置かれたり、ウエディング会場でも場を盛り上げる。

ファッションショップとインテリアショップの区別があいまいになったジャンルレスな現代。どの店でも香水やカトラリー類と並び大切にされているのが花だ。美しい花は“ファッション周辺”の重要なエッセンス。造花でも本物と見分けがつかないほど技術が進化して、生花以外を飾る習慣が生まれたことも人気の一因のようだ。

自身のECショップ「ドゥイエ ドゥイエット(doille doillette)」を手掛ける尾崎さんも、モダンな発想で花と関わるひとり。独立して約1年の新進クリエイターだ。彼女が使う素材は造花、ドライフラワー、プリザーブドフラワー。これらをミックスしブーケやリースを仕立てる。生花を使わない理由を尾崎さんが次のように語った。
「4年間花屋に勤めていました。余ってしまうロスフラワーの問題がずっと気になっていて。独立するとき考えたのが生花を使わないこと。造花の品質も上がりましたし、消費期限がない素材を使おうと決めました。ブーケは一般的に生花、ドライフラワーなどひとつのジャンルだけでつくられます。わたしのやり方は全部を混ぜ、それぞれのいいところを引き出すつくり」
無駄をなくしコストカットできたことも独立の手助けになった。
「制作は基本的にわたしひとりで行い、店やイベントは妹に手伝ってもらいつつ運営しています」

花束をつくるプロセス

尾崎さんがベーシックなブーケのつくり方を披露してくれた。オーダーメイドでつくることが多いため、客のリクエストにより素材は変わっていく。

デスクに造花を並べ選んだものを手に持ち、ベースの形をつくる。「造花は丈夫で曲がりにくいから、骨組みにするのにぴったりなんです」と尾崎さん。
配色を考えつつ付け足し、少しずつシルエットを整えていく。
途中でテーブルから離れ、プリザーブドフラワーやドライフラワーのストックコーナーに。ニュアンスを加えるパーツを選ぶ。
エレガントに広がる完成間近の花束。コラージュ手法でつくられたブーケだ。

尾崎さんのブーケには絶妙なコントラストがある。人工的な造花と、かつては生花だったドライな花とが入り交じるニュアンスの違い。ただし花以外の要素は含まれていないので、印象はごく自然なもの。劣化が少なく美しさが持続して長く飾れるのも大きな魅力だ。

制作に使う使う道具たち。ポップな色が楽しい。

アトリエのブーケとリース

アトリエに飾られたアーカイブを眺めると、豊かな発想が伝わってくる。ニュートラルで豪華、そのバランスが鍵だ。

「わたしらしい作風かも」と尾崎さんが言う大きな作品。アンティーク調のスモーキーな色がミックスされ、パープルの可憐な小花がひょっこりと顔を覗かせている。
躍動感のあるダイナミックな造形。このように落ち着いたニュアンスカラーをベースに、オレンジ色をアクセントにしたブーケが最近は人気だそう。

青りんごのドライフルーツを使ったクールトーンのリース。

デスクにさりげなく置かれた、花と世界観がリンクする小物たち。

たくさんのブーケやリースに混じってアトリエに飾られているのが、19世紀末から20世紀初頭の名画。マネ、ルノワール、クリムト、ドガといった印象派を中心にした巨匠たちの絵は、豊かな色彩に包まれた華やかなもの。クラシックな美術にも目を向けるセンスが、尾崎さんの個性を育んだのかもしれない。

イベント販売、ウエディング撮影の舞台裏


ポップアップイベントへの参加やウエディング撮影のオーガナイズまで、活動は幅広い。写真や空間づくりはもともとスタイリストが得意とする仕事である。スタイリストのアシスタント経験を持つ彼女にも身近なジャンルだ。
※以下、写真提供:ドゥイエ ドゥイエット

東京・日本橋三越本店の自主編集型ファッションショップ「ミグジュアリー(Mixury)」で開催されたポップアップイベント。

一週間の期間でレディメイド品を販売。2022年3月に開催。
尾崎さんが主催するウエディングのロケーションフォト。ドゥイエ ドゥイエットのブーケやリースを使い、衣装も用意してカップルの記念撮影一式をセッティング。
様々なシチュエーションに対応するロケーションフォト。

近年に盛り上がりを見せるウエディング市場は、ブーケやリースがもっとも活躍する場。尾崎さんも自らオーガナイズするプランを立ち上げた。
「今年4月にはじめたばかりです。オリジナルの花による空間づくりをすれば、ほかと差別化できると考えています。はじめたきっかけは、なによりわたし自身がこういう撮影をやりたかったから」
独立したからこそなんでもチャレンジできる。やってみることで進むべき方向が見えてくる。

スタイリストから花屋へ

スタイリストはやることの幅が広い職業だ。ファッション雑誌の撮影においてもモデルに着せる服を選ぶのはもちろん、必要な小道具も準備してトータルで絵づくりを行う。スタイリスト志望で文化服装学院に入学し、卒業後はプロのアシスタントを勤めた尾崎さんの志向はいまの仕事に結びつく。でもなぜ花を表現手段に選んだのだろうか。
「思い返せば学生の頃に作品づくり(ファッション撮影)をしたとき、花をテーマにすることが多かったですね。古着に夢中だった中学から高校時代も花柄が好きでしたし……祖母が花柄好きだったことも惹かれる理由かもしれません。祖母のアンティーク趣味の影響を受けているのかも」

コロナ禍以降に世のなかでライフスタイルを大切にする機運が高まり、ファッションの役割も大きく変化してきた。家、オフィス、ウエディング、イベント会場で気分を高める花は、服やアクセサリーと同様の“ファッションアイテム”になっている。これからも文化服装学院の卒業生から、尾崎さんのようにファッションの領域を押し広げる人たちが現れていくに違いない。

※2022年6月取材。

information

2022年7月21日(木)〜8月7日(日)まで埼玉「ルミネ大宮」にて、ハンドメイドセレクトショップ「no Address」がポップアップイベントを開催。ドゥイエ ドゥイエットも委託販売で出品するのでお見逃しなく!

LINKする卒業生

・大久保春香(ファッション流通科スタイリストコース卒業)
オンワード樫山/マーチャンダイザー
「プライベートで食事して情報交換する仲のいい同級生です」

・鈴木友丈(服装科卒業)
フローリスト石原/店長
www.ishihara-florist.co.jp
「勤めていた花屋の店長が、文化の卒業生でした。まったくの偶然です!フラワーアレンジメントをここで学びました」

・平松正美(スタイリスト科及びファッション流通専攻科卒業)
コスチュームスタイリスト
https://sumirekai.bunka-fc.ac.jp/links/010/
「文化の学生時代の担任で、いまはアイドル衣装を中心に活躍している恩師です。先生のお声がけでアイドル撮影用のブーケをつくったことも」

記事制作・撮影(ポートレート、アトリエ)
高橋 一史 ファッションメディア製作者/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院(旧ファッション情報科)卒業。編集者がスタイリングも手がける文化出版局に入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き・撮影・ファッション周辺レポート・編集などを行う。

一般公開メールアドレス:kazushi.kazushi.info@gmail.com

関連サイト

INTERVIEW

フラワーデザイナー
doille doillette
尾崎朱梨(おざき・あかり)
ファッション流通科スタイリストコース卒業

1995年、北海道生まれ、埼玉育ち。高校卒業後に文化服装学院に入学。卒業後にスタイリストのアシスタントになる。その後、好きだった花の道に進むべく花屋に勤務。2021年に独立して自身のフラワーブランド「ドゥイエ ドゥイエット(doille doillette)」をスタート。

Vol.012 NEXT 金子俊平

ペイズム デザイナー 金子俊平

服装科~服飾専攻科技術専攻卒業